この人と一緒になって、人を思いやる大切さを教えてもらいました。

──ご結婚なさって50年以上。一緒にいて楽しいと感じる時間はどんな時ですか。

新吾さん:家で食事をする時間です。私は仕事柄、外食や宴席に出席する機会が多いのですが、最後の“店”はわが家だと決めています。夜の9時くらいには家に帰り、そこからまた家内と飲み始めるんです。ふたりで他愛もない話をワーワー話して、最後には自分たちを褒め合って、笑って飲み終える。これが最高に楽しい。家に帰るのが本当に楽しみなんですよ。家内の料理もおいしいし。

英子さん:基礎的な料理の勉強は何もしていません。結婚した当初は、料理が本当にできなかったんですよ。

新吾さん:昔は「料理ができん」と言って1日3回くらいは泣いていましたからね。それが今ではすばらしいですよ。家内はものすごく勉強家だし、読書家で努力家。本を読んで、料理を自分のものにしたんですね。

英子さん:改めて思いますのは、結婚して得られたものがとても大きいということ。世の中をあまり知らない若い頃に結婚したので、主人と一緒になって思いやりが大事っていうのを教えてもらったんですね。毎日一緒に暮らしている中で、教えてもらった気がします。

「よくぞ私と一緒になってくれた」。
感謝の想いでいっぱいです。

──今、改めてお相手に伝えたい想いは。

新吾さん:よくぞ私と一緒になってくれた、と思っています。もう長い間一緒にいるんだけど、もし仮に家内が隣にいない人生だったらと考えると、さぞかし寂しい人生だっただろうと思います。家内は何を問いかけても答えてくれるし、質問の内容が分からなかったらすぐに調べ始める。ものすごく手応えのある連れ合い。こっちも勉強になります。

英子さん:私もまったく同じことを主人に返します。

これからもふたり健康でずっと楽しく語らえたら幸せ。

──これから一緒にどのような人生をお過ごしになりたいですか。

新吾さん:家内はもっともっと本を読んで勉強して、自分の考え方を豊かにしたいと考えている勉強家。これからも自分の興味があることを勉強し続けてほしいですね。自分のレベルアップをはかること。それが家内自身の生涯の励みになるのですから。

英子さん:私から主人に願うことは本当にシンプル。今のまんまでずーっと健康で、幸せに生きてほしいなと思っています。一緒にお酒を飲みながら話ができたらそれで十分。

新吾さん:30半ばまではふたりとも全然お酒を飲んでなかったの。でも、若い頃に無茶して飲み続けていたら、今ごろ体を壊していたかもしれませんね。だから今楽しく一緒にお酒を飲める幸せをかみしめています。

インタビュアー/木下英大(香椎宮) 写真/大塚紘雅

松尾新吾さん 英子さん

夫の松尾新吾さんは九州電力株式会社特別顧問。1963年同社に入社し、2003年から2007年にかけて代表取締役社長を務め、九州経済連合会会長など歴任。電気事業や福岡・九州地方の産業振興に尽力するその功績が認められ、2019年には秋の叙勲、旭日大綬章を受章。同じ職場で出会った妻の英子さんとは1967年にご結婚。現在もほぼ毎日晩酌をしながら語らい、休日は景勝地の散策を楽しむなど仲睦まじいご夫婦である。