ウソがつけない人だ、と
メールの文体から伝わってきた。

──そもそもの出会いはどういう感じだったのでしょう。

タカユキさん:きっかけは音楽なんですが、当時、互いの音楽の活動シーンは全然ちがってたんです。マキちゃんはシンガーソングライター、僕はアーティストのサポートミュージシャンをやってた時だから、出会うチャンスがほとんどなかった。ある日、マキちゃんが普段は行かないようなイベントに友達に誘われて来たところ、僕を紹介されたいみたいで、それが最初かな。

マキさん:ちょうどその時、私のバンドのギタリストが抜けることになっていて「だれかいい人いませんか」という話をしたら、「この人ギター弾けますよ」とイシイさんを紹介してもらったんだよね。色々出歩くことも大事だなと思いましたね。

タカユキさん:行ってよかったね、気がのらなくてもね(笑)。で、マキちゃんからもらった名刺に音楽が聴けるサイトが書いてあって、聴いてみたらその曲がものすごいよかった。そこから「今度一緒にやりましょうね」ってメールを出したんですよ。めっちゃヒドい曲だったら、そんなこと書かないですから、僕は。

マキさん:うん、メールの文体からも、歌い手として興味を持ってくれていそうだなって気がしたよ。「すごく良かった」というのが伝わってきた。口がウマいとか、社交辞令じゃない感じ。ウソがつけない人だなって思いましたね。

自分と違う誰かと意見を交わすから、人生って楽しいと思う。

──ご夫婦で一緒に仕事もなさっていると、どういう影響がありますか。

タカユキさん:僕らの場合は特に、性格や考え方がけっこう違うんですよね。で、違うってところに、発見がいっぱいあるんです。「そう考えるんだ」とか「そんなこと気にするんだ」とか「そういう気付きがあるのね」とか。それが夫婦だったり、仕事仲間だったりすると、そういう発見を経て何らかの結論を出さなきゃいけない時がある。家族の方針だとか、仕事の方向性とかね。違う価値観を持ってる2人が1つの価値観を共有するわけだから、それこそいろんな角度から物事を考えるよね。

マキさん:歌詞を1つ作るにしても、ゼロから1が私で、アイデアをいろいろ出しながら1を10にするのがイシイさんだったり。私が「こう思う」ってことを、イシイさんは「それってこういうことじゃない?」って意見を出し合って、その繰り返しですね。お互いに「へえ、そっちから考えるんだ」と相手の発想を面白がる気持ちがあるからできる。物の見方や考え方が2倍になるっていうか。

タカユキさん;自分と違う誰かと意見を交わすから、人生って楽しいと思うんですよ。人と関わることが楽しくなる。同じ意見ばかり聞いててもダメじゃないけど……ねえ。僕は自分と違う人の声を知りたい。それが夫婦の場合は濃いな、と思います。

マキさん:うん、ギューッと濃いね。

タカユキさん:相手が自分とまったく同じ人だったら助かるのに、と思うこともありますけどね。ゴミをポイッて置いたりして、「なんでゴミ箱に捨てないかなァ。僕が2倍捨ててるよね」とかさ(笑)。でも、そうじゃない部分の面白さの方がいっぱいあるわけで。自分にとって全部OKなことばかりだと、自分がラクしてるだけになっちゃうから。

──夫婦をテーマにした曲ってありますか?

マキさん:『線香花火』かな。違う人間が同じものを一緒に見る大切さを書きたくて。

タカユキさん:線香花火って、どこか人生みたいじゃないですか。パッと火が着いて、その火が思いがけない動きをして華やかだったりするけれど、火花はだんだん穏やかになって、最後はポトリと火の玉が落ちて命が終わるっていうかね。その流れを共に見るということが、人生を共に過ごすということに通じるのかな、と。