補い合ってる、助け合ってる。
2人で音楽をしていると、
そういう感覚がすごくある。

──ふたりで仕事をするからこそ、発見もあるのですね。

マキさん:そういえば、この前、ある有名な人の曲に詞を書くという仕事を引き受けて、私が、もうどうしよう!?って位追い込まれた時があったじゃない? 締め切りは迫るし、詞は浮かばないし、限界と向き合う毎日に私がイライラしていて、まあその仕事はイシイさんがもってきてくれたものだったので「こんなキャパオーバーな仕事を私にふってどうするの!できないかもしれない!」ってずっとピリピリしてたんです。それでもイシイさんは絶対に怒んなかったよね。ずっと大きく見守ってくれている感じがしてて、「なんていい男なんじゃあ!」と。この人のためにもがんばらなって、ずっとずーっと考えて考えて、ギリギリになってやっといいのができたんですよ。イシイさんのおかげでいい挑戦ができたなって今となっては思います。

タカユキさん:怒んないよ、そんなの。まあ真面目な話、僕はマキちゃんにすごい才能があるって思ってるから受けただけで、あんまり心配してなかった。たくさん印税入るといいね(笑)。

マキさん:こういうおおらかな体(てい)でいてくれるから、こっちも安心できている。無理だと思っていた仕事もやれたのかもしれない。一緒に曲を作ったわけではないけれど、イシイさんの存在、2人で音楽をやってるなっていうのを感じましたね。

タカユキさん:補い合ってるって感じ、助け合ってるって感覚はすごくあります。互いが持っている能力が「こんなに違うかね~!」って思うくらい違うからね。得意分野が全然違うから、面白い。

──結婚してから約10年、おふたりにどんな変化がありましたか?

タカユキさん:10年前の自分たちを僕はあんまり覚えてないんですけど、まあいろいろ変わったよね。特に僕らは一緒に生活して、子供を育てて、仕事もして……と同じ時間を多く過ごしてる分だけ、同じこともたくさん学んできたと思うけど。

マキさん:うん。ものすごく勉強になったと思います。結婚する時、両親に「イシイさん素敵すぎてどうしよう。」と話したら、母は、私が完全に浮かれてると思ったのでしょうね、「10年後もそう言っていられるかね~」って笑ってましたね。でも、10年以上経った今も全然変わらないんですよ。変わらないというか、一緒に乗り越えてきた分、むしろ深くなるばっかりです。

タカユキさん:夫婦も家族もひとつのグループだから、「もういいや」って考えを投げ出すわけにはいかないんです。でも、だから何かを制限するとか、どちらかの行動を束縛するとかではなくて、「互いの関係性をもっと良くしていこう」とか「よし、問題を一緒に解決するぞ」という気持ちが働くようになりましたね。

マキさん:ずっと独身だったとしても、友達や家族だったり、誰かと何かを一緒に解決したい、っていう根っこの部分は変わらなかったんだろうけど、ね。夫婦という関係性だと、より深いところまで話し合うことが多いので、だからこそ物の見方や発想が増えたのは確かです。

タカユキさん:家族以外の場合でも、自分と考え方が違う相手といたとしても「もういいや」って突き放さなくなった。お互い、自分とは違う立場や背景があるんだろうなあということをより深く考えるようになりましたね。その人の背景を思いながら、いい距離間を探そうとしたりとかね。

夫婦の平和も、世界の平和も
根っこは同じ。
相手を思いやる心。

──そういう気持ちの変化は音楽にも表れているのでしょうか。

タカユキさん:もちろん。僕らのユニットiima(イーマ)のコンセプトは「日常がちょっと違った景色に見えてくるような、何かに気が付いてほしい」。このコンセプトを突き詰めていくと、見えないところを想像して思いやりを持つ、ということなので、結局のところ、願いは世界平和なんてすよ。七夕の短冊に毎年「世界平和」って書くくらいですからね。

マキさん:誰もがすぐ近くの人を思いやれたら、やがて世界平和につながると思っています。見知らぬ人とは、すぐに親しくはなれないかもしれないけど、少しずつ話し合ったり、ちょっと相手のことを深く考えるようにすれば、思いやれる部分って少なからず見えてくると思う。それは人だけじゃないくて、動物とか、自然に対してもね。うん。夫婦の平和も世界の平和も、根っこは同じ。相手を思いやる心、ですよ。

インタビュアー/重村直美、木下英大(香椎宮) 写真/大塚紘雅

永山マキさん・イシイタカユキさん

福岡と東京を拠点に活躍するシンガーソングライター・永山マキさんとギタリスト・イシイタカユキさんのご夫婦。日常がちょっと違った景色に見えてくるような言葉と音を追求する音楽ユニットiima(イーマ)としても活躍中。

公式HP|iima-music.com