──結婚式を挙げたのは2007年ですね。決め手は何だったのでしょう?
恵美子さん:私たち仲が良かったし、恋人同士のままでも良かったんです。でも、私が東京を拠点に仕事をする比重が増えた頃です。
ニックさん:恵美子が仕事をするのは大賛成だったんです。彼女は優秀な経営者だし、尊敬もしていた。仕事は自由にしてほしい。ただ、東京に拠点を移すのは……私の中に遠距離恋愛という選択肢はなかったから。
恵美子さん:何となく彼が言いたかったことを察した私は「あなたに集中することを私に望むのであれば、あなたも真剣になるべきでは」と伝えました。
ニックさん:私ももちろん恵美子のこと大好きだし、二度と彼女のような女性とは出会えないと思っていましたから、その言葉は「結婚」という手続きをとる決定打になりました。
恵美子さん:国籍が違う2人が人生を共に歩もうとすると、手続きにおいて大変な場面も多々出てきますよね。どこにいても、誰からも、家族、であると認めてもらえることは強みだと思ったんです。
──外国人同士だったことが結婚するきっかけだったとも言えますね。
恵美子さん:それもひとつのきっかけですね。お互い違うので共通のことをもつために一緒になったのかもしれません。
ニックさん:私の場合、恵美子との結婚は、彼女のことを愛しているから、という理由が何よりも一番大きい。私は福岡に住んでもう30年以上になりますが、福岡・九州が大好き。今の仕事もお金を稼ぐためではなく、ここが好きだからです。福岡を愛する移民として、外国人として、日本人である恵美子との結婚は社会生活を送る上でも、プライベートでも、ビジネスでも、何もかもプラスになることばかりです。
──結婚生活を送る上で、生まれ育った環境の違いはストレスになりませんか?
ニックさん:ストレスはないよね。
恵美子さん:いやいや、あります(笑)。ストレスとして捉えていませんが、もともとどうせ違うので何もかも新鮮です。「そこですか、怒るのは」「そこで笑うのね!」、の連続です。
ニックさん:そう?
恵美子さん:そうだよ。だけど、だいたい自分以外みんな違う人でしょう?同じような肌の色や顔形をしているだけで、勝手に「似ている」とか「分かってくれている」ような気になって、そうじゃないところに対して怒ったりしますよね。でも、私たちはその「分かってくれている気がする」は、最初から期待していなかった。そもそもが違うものだと思っているので。違いなんて笑い飛ばせばいいですし。その中で自分がどうあるか、なんですよ。
──ご夫婦として一緒に暮らすようになって、ケンカをすることってありますか?
ニックさん:普段ケンカをすることですか?プライベートではほとんどありませんよ。
恵美子さん:ええ。仕事上でのディスカッションはもちろんありますよ。でもプライベートではケンカする時間がもったいない。だって二人しかいないのにいがみ合う時間ができるのなんて、イヤでしょう?
ニックさん:ケンカになるくらいなら、「まあいいか」と早めにあきらめる(笑)。その時は上手くいかないなと感じたとしても、長い目で見るとたいしたことないことがほとんどだから「まあいいか」の方が賢い選択。「まあいいか、また明日」ってね。
──ご結婚なさってから、恵美子さんはニックさんと一緒に「Fukuoka Now」の仕事に携わるようになりました。
ニックさん:彼女には、以前経営していた会社を手放した後もいろんな可能性があったと思う。恵美子にきてほしい会社も多かったでしょう。一方、「Fukuoka Now」はまだ小さいビジネスだったけど、彼女には前々からよく仕事の相談もしていたから、彼女と一緒に仕事をできたらいいなと私は何となく思っていました。
恵美子さん:私は、仕事というものは、カップルというか家族が食べるためにするものだと思っています。家族のために楽しく仕事ができたらいいな、と。だからニックと一緒に仕事をするのは必然ですね。一緒に美味しく楽しく飲むため、食べるために稼いでいるわけですし、それが「Fukuoka Now」のように意味がある仕事であればなおさらいいことだと感じています。
──仕事もプライベートも24時間一緒ですね。
ニックさん:ええ。私は彼女と一緒にいる時間が好きです。そもそも若い頃から小さくても自分の会社を経営したかった。恵美子とのいい出会いがあって、その後、彼女が仕事の転機を迎えて、それなら一緒にファミリービジネスとしてやりましょう、とかなり強く推しました。私の仕事はただお金を稼ぐためだけじゃなくて、社会に貢献できること。私のライフワークだし、ベネフィットがある。恵美子が入ってきたことで会社もいい意味で変わったし、私は嬉しいです。
恵美子さん:ニックが言う通り。一緒にやることに意味がある。最高ですよね。